ひとりぼっちの自転車日本縦断 Part5【北海道函館市~宗谷岬】
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8/19 北海道函館市~北海道八雲市
▲本日の旅路
全身を懲りでバッキバキにした私がネカフェを出たのが9時半である。
本日は函館を観光した後に洞爺湖に向けて距離を詰めておこうという算段である。
まずは赤レンガ倉庫 を散策
昨日同様訪日客に全力で媚びている。が、やはり綺麗な場所でもある。
本当にヨーロッパの港と勘違いしてしまうほどに。
そこにあるラッキーピエロという超有名な函館市内のみにチェーン展開しているファストフード店で朝食を頂く。
チャイナチキンバーガーとポテトと烏龍茶のセット。あまり期待せずバーガーにかぶりついたが想像を絶する旨さだった。大阪にチェーン展開してくれたら間違いなく通う。ポテトも太いタイプでソースがかかっていてうまい。大満足し函館山へと向かう。ただ、
函館山は自転車走行不可なのでその前の坂へ。
セイントスノーとaqoursで踊ってたあそこ。坂を登るとかなり見晴らしの良い展望が広がる。
市街は路面電車の通る風情ある街並みとなっている。
そして再び晴れた函館駅へ。
観光案内所でラブライブサンシャインの巡礼マップが貰える。
北上して特に興味はないが五稜郭へ。
正直こういう風景は東北でもっと見て来ている。
私が北海道に期待しているのはそこではないのだ。タワーだけとって函館のゼビオへ。青森の2店とは段違いで品揃えが良かった。アディダスの下のジャージを買う。
店員に「この先寝袋無しはキツイか」と問うと、北海道特有の訛りで
「急激にゲリラで冷えるのは北海道ではよくあること。北海道の夏はお盆を過ぎると終わり、持っていないと寒いのは間違いない」
と現地民ならではの的確な助言を頂いた。
その言葉に推されて2500円のシュラフを購入。思っていたより安くコンパクトなものが買えた。設定温度が15℃前後、さすがに10を切ることはないだろう…多分。
向かいにあるUNIQLOへ。さすがに無いかなぁと思ったが、さすがは雪国、
長袖ヒートテックがレジ前に用意されていた。
1着購入しシュラフと共にリュックに詰めてみる。一度全部出して計画的に詰めるとパンパンだが入った。
シュラフ、テント、マット、枕、服、ミラーレスとこれだけ詰められるTHE NOCE FACE teller45本当買って良かった。
シュラフ自体が軽いためか、重さもそこまで体感で違いはなかったただ、高さが出たので上を向こうとするとヘルメットがリュックに当たるという前傾姿勢のロードバイクには致命的な支障は出たが、なんとか補える範疇ではある。
いよいよ北海道の道を本格的に進んでいく。
まずは5号線、自転車、歩行者が通れない自動車専用道路に沿った走りやすい道をとばす。
函館といったら塩ラーメン。道中昼食としてラーメン屋に立ち寄る。塩であっさりしているが、その中でも色んな味が混ざり合っているのがわかる。美味い。
何個か峠?のような坂もあるが、八幡平を超えた私には屁のような傾斜であった。ただ、道路の補正がされておらずガタガタで、端的にいうと自転車には優しくない道である。
なので、後ろの車と間合いを計りながら白線の右側を通らなければならない場所もある。
凶暴な形をした山が右手に。
山の画像を見るのが好きでいつも思うのだが、あれの先端らへんはどのようにして登っているのだろうか。適当に坂を越えてトンネルを抜けると海沿いの道へ。北海道の尻尾のカーブの部分を沿って行く。
総合で70km程走りアテを付けていたキャンプ場へ。
1キロほど登るとご覧の景色。
しかしいざ行ってみるとどうやら自転車には厳しいらしい。家族連れ向けのキャンプ場で、自転車なら2000円。テント泊にしてはコスパが悪すぎる。
ただ係りの人はかなり親切に対応してくれたおかげで晴れ晴れとした気持ちで去って行くことができた。
そしてもう一つアテを付けていた八雲駅近くの公園にテントを張る。
ただ、非常にリスキーなのがこの公園が住宅地の近くであることだ。
民間公園でのテント泊は限りなく黒に近いグレーだ。
運が悪ければ、近隣住民の通報や、パトロールしている警官に補導される(これはこれで寝所を提供してくれそうだが、最悪旅が終わりかね無い。
タチが悪いのが族やホームレスに襲われることである。つまり様々なリスクを孕んでいることを呑んだ上でやる必要がある。
ただ、この公園は金具の刺さりもよく、テントの張りやすさとしては野営地並みであった。そしてマットとシュラフである。ヒートテック長袖長ズボンジャージにシュラフという完全快適装備で眠りについた。
8/20 北海道相生公園(八雲)~北海道洞爺湖
▲本日の旅路
なんと快眠すぎてエロい夢を見てしまった。
起きては5時だったが余りにも快適すぎてもう一眠り、起きては6時半だがボツボツとテントに打ち付ける雨音がビートをだんだんと早く刻んで行った。
自転車は建物の屋根の下にあるため問題はないはずである。このテントはどうだろう?Amazonの商品説明欄にあったように耐水性には定評があり、群れること以外はとくに浸水することもなかった。30分ほど買っていた菓子パンとコーヒーで胃袋を癒していると雨音がやみ、テントを開けるとどんよりとした雲が海の地平線まで広がっていた。
またすぐ降るんじゃねぇかという一抹の不安をかかえながら、テントを畳み支度をしてすぐに出発。
本日は天候にもよるができれば洞爺湖までは行っておきたい。
ここ最近このテントを畳んで出発するまでの動作が劇的に早くなった気がする。
八雲駅を出発する。北海道の朝はしっとりと冷え、その上自転車で走るとなると体感温度はいかほどか。
中にヒートテックを着込み、上下長袖ジャージで5号線を昨日と同じ要領で進んでいく。
道こそはかなり広いが相変わらず白線の左は所々がたついておリ、北海道=走りやすいの概念とイメージは崩落しつつある。
道が広いせいか、アホみたいに飛ばす乗用車が後をたたず、バイクよりもタチがわるい。荒らくれた者は白線をえぐって来ることもあり、やや肝を冷やす。
道中にあったはっぴーディアーズという色彩豊かな店で休憩。Googleマップでは名前が違うので注意。
店内はヴィレッジヴァンガードのように頭の悪そうな内装であるが、北海道限定土産やソフトクリーム、さらにはコーヒが無料で飲むことができる。
さらには100円以下でペットボトルの各ドリングが売られていた。ちなみにこの土産コーナーのチョコ、クッキー等は試食可能で、いろいろ食べているだけで楽しむことができる。
ちなみに私はソフトクリーム250円を購入。北海道のソフトクリームはお初にお目にかかる。食べてみた感想はまず味が濃厚である。そして、サラッとというよりはトルコアイスのように粘りがあり口の中で美味さが咀嚼できる。
一言で言うと激ウマである。
こちらの施設は全体的に推せるので是非立ち寄ってみてほしい。
さて、5を進んでいると洞爺湖への案内が見える。
青看板に従い37に進路を移す。
その通りに進んでいると洞爺湖駅に到着。ちなみにこの駅から洞爺湖は見えない。
やはり十和田湖と同じく洞爺湖も山に囲まれた地帯にあるようで、見に行くには北上し山を越える必要がありそうだ。
と、その前に2kmほど進んで腹ごしらえをする。道の駅あぷたでいただけるウニ丼、こちら1600円ちょいである。
ウニの相場がよくわからない人にお伝えすると、函館でウニ丼を食べようとすると4000円かかる。私はくら寿司のウニしか食べたことが無かったので、実質ウニを食べるのは初めてと言って良いだろう。
クリーミーなウニを頂いた後、2km戻り、578から洞爺湖を目指す。
表記では洞爺湖温泉担っていることが多いが実質同義語である。坂を登って行くと分かれ道、前には馬鹿デカイトンネル、左にはクネクネとした坂である。
Googleマップで確認すると前のトネルは最短で洞爺湖に行くことができる。そして578はまごうことなき山道である。悩んだ末山道で行くことを決意。
これが結構きつい、しかし、トンネルの中で後続車のプレッシャーに煽られるよりは100倍マシである。最軽量ギアで登って行く。
洞爺湖を上から
ぼちぼち上ったのがお分かりいただけるだろう。
丁度この日は一年に一度のトライアスロンの開催日だったらしく、洞爺湖付近はランナーでごった返していた。
洞爺湖付近は整備され過ぎていて、いかにも訪日観光客に媚びているようであまり好きになれなかった。
やはりサミットの効果が大きい。
洞爺湖版アニメイトの越後屋。銀魂の銀さんが鞘に納めている木刀に洞爺湖と彫られていることから聖地と化している。
後、洞爺湖聖地というと天体のメゾットだろうか。
2014年のアニメだが内容を全く覚えていない。
観光案内所的なところに未だにパネルが設置されていた。
さて、時間も時間なのでそろそろ本日の寝床は確保したい。とりあえずGoogleマップでキャンプ地を検索すると洞爺湖沿にいくつか出てきた。
その中でも森と木の里センターというキャンプ地に行くことにする。そして本当にタマタマだが、そこは天体のメゾットの聖地でもあった。(到着するまで気がつかなかった。
洞爺湖を反時計回りで回っているとこういう案内が出てくる。
どうやら登った先にあるらしい
まぁまぁの激坂で一番まずいのは道幅の狭さだ。前方から白い車が下ってきて、スレスレで躱す。
危ないししんどいなぁと愚痴りながらもなんとか足をつかずゴール。
なるほどロッジや景観は完全に聖地だ。ここもそれは推しているようである。塔の中にいろいろありそうだったが入ることはできなかった。
しばらく達成感に浸っていると、くる途中にすれ違った白い車が上がってきた。
自分以外のキャンプ者か?と思ったがどうやら違うようで、その方は車から降りるなり、
「ここ自販機すらないけど食べるものとか持ってきてる?」
と言った。どうやらここの関係者で、すれ違った際に心配になって追いかけてきてくれたそうだ。
「荷物おいてまた降りて買ってまた上がろうと思ってました」と伝えると
「いやぁ…この坂結構きついよ?てかよく足つかなかったね、大体の人最後らへん押してるのに」と目を丸くしていた。「東北でえぐい山登ってきてるので」と伝えると、「旅人なんだね、どうする?車乗せていこうか?近くのセイコーマートまで」
ご厚意に甘えることに。神かこの人は。
山のふもとまで降りて、セイコーマートで食材と酒とお茶を買い込み車に戻る。
この人が本当に話しやすい人でついつい色々と旅の記録を語ってしまった。そしてキャンプ地に戻った後500円払い、施設の説明。どうやらシャワーも無料で使えるようだ。
この時は私1人だったが、後でもう1人くると説明を受け、お礼を言いテントを張る。
ロケーション最高ではないか。
この景観を見ながらセイコーマートの弁当をメロンチューハイで流し込む。もう最高だ。ただ、メロンチューハイに蟻が群がったことを除けば。とりあえず虫が多いのがたまに傷だった。風呂から帰った時にはテントは昆虫王国と化していた。
19時になるとやけに騒がしくなってきた。なんだ?と思いテントから出ると10人ほどの自転車に乗った者が野営地に乗り込んできたところだった。しかも女子もいる。
話を聞くと高校生で、自転車好きで集まって北海道一周をしに来たらしい。
何か負けた気がする…。
みんなでやいやいカレーを作っており、若干うるさくはあったが、イヤホンで音楽を聴きながらシュラフに包まって眠りについた。
▲本日の旅路
非常に良い目覚めだ。そしていい天気。
テントを開ける。そして洞爺湖が見える。素晴らしい景観、素晴らしいキャンプ地だ。
森と木の里センターまた来たい。
高校生も起きたようで「おはようございます。」と挨拶をする。
私はテキパキと片付けを初め、あっという間にテントをたたみカバンに収納した。周りは結構余韻に浸っていたいのかテントでぼーっとしていた。まぁこの反応が普通なのだろうが。
本日はあえて千歳空港を目的に出発する。
ここからなら1日で札幌まで行けそうだが、北海道の玄関口である千歳空港に1度寄ってみたかった。
457号で支笏湖を目指す。天気は非常に快晴である。
夏の象徴である向日葵畑だが、暑すぎるせいか今まで咲いているところをほとんど見ていなかった。なので、兼業農家の補助金目当ての栽培かもしれないが見られた時は嬉しかった。
結構な距離を走ると276があるのでそちらへ移行。
きのこ王国という割と有名なサービスエリアっぽい所へ。
伝われこの大きさ、恐竜のオブジェクト。
朝食を済ませる。
向かいにあるジェラート屋。店を切り盛りしているお母さんに北海道の情報を聞きながらジェラートを頂く。塩とバナナを注文。
そこに言葉はいらない、それくらい旨い。何より店の雰囲気がいいので是非立ち寄って見てほしい。
276は一部交通規制が引かれており、このような渋滞も時折。
野生動物飛び出し注意看板も頻繁に見かけることから減速はマストだと言える。
(しかし出てこなかった。)
本来今日泊まるはずだったモラップキャンプ地。まだ100kmも走っていないのでここで終わる訳にはいかない。
453で札幌への案内が出るのでそちらへ。そうすると次は札幌or千歳の選択が出る。悩ましい。
千歳までは16kmほど、札幌へは50km+山越えを強要される。札幌も射程圏内といえば射程圏内だが千歳空港も見て見たい。
この看板の近くで熟考。ちなみにジェラート移行自動販売機はなく、暑いと水分ゼロでこの辺りを彷徨うことになる。
幸い涼しかったのであまり水分は逃げなかったが。実感こそないがそこそこ 標高の高い位置にいたようで、千歳までの16kmはほぼ降りであった。
千歳空港への入り方は自転車だと少し迷うかもしれない。
こういった空港の雰囲気は久しぶりでワクワクする。
大体の店で試食が可能。頑張れば試食だけで腹を満たせるのでは?
チーズが恋しかったのでチーズ料理を頂く。他にもラーメンや豚丼など北海道のグルメは大体この空港で揃う気がする。流石は北海道の玄関口といったところか。
そしてその日予約したライダーハウスに泊まることに。
今回お世話になったのはライダーハウス千歳という所。1000円で冷蔵庫レンジコンセント有りの部屋に3人相部屋で止まることができる。
後の2人がいい人で、話が尽きなかった。
また、1年後輩で10人ほどで来ていた横浜慶應のチャリサークルとも情報交換をすることができた。
ライダーハウスはそういった人と人との繋がりのきっかけをもたらしてくれる素敵な空間である。
本日はここまで。
8/22 北海道千歳市~北海道札幌市
▲本日の旅路
疲れが溜まっていたのか朝の9時まで爆睡していたようだ。
相部屋の私以外は全員起きていた。
札幌へは40km弱だが、36の一本道な上、距離も短い、特筆すべき点はないので大幅割愛する。
札幌駅前に到着。この時点ではそこまで達成感を感じていない。
うむ、いい傾向だ。
こういう旅は気力が切れてしまった時点で終了だから。
しかし、札幌も栄えている。天気アプリを見ると札幌で3日過ごして台風をやり過ごしてからオロロンロードに臨むことになりそうだ。
少しばかり歩いて周ってみたが大規模な商店街にある服屋もナウいし、飲食店も充実、すぐ近くにはすすきのというハッテン場まである。
生活する分には何不自由ない街だろう。
晩御飯は地味に北海道名物である豚丼を頂いた。炭の味が効いてこれまた激旨である。
その日は札幌のど真ん中にあるカプセルホテルに泊まることにする。
チェックアウト時間がなんと24時間後で3000円、出入り自由という素晴らしいカプホである。その上大規模な温泉も備え付け、グーグルのレビューは軒並み高評価であることもうなずける。
しばらくはここに世話になるかあ。
本日はここまで。
8/23 北海道札幌市~北海道石狩市
▲本日の旅路
天気アプリと空を見ると激動であった。
何日か前までは雨マークだった今日がなんと快晴になっていた。
それに総じて数日前に確認していたスケジュールとは大幅に変わった天気が1週間の予定として列をなしていた。
そうなると朝食バイキングを食べる手よりも、スマホを操作し地図と天気の照らし合わせを行う方に意識がいってしまう。
本当にどうしようか、大きな台風2つが25日に稚内に来るというニュースも目にする。私はその台風をやり過ごしてからということばかり考えていたが、
よくよく考えれば台風が来る前にゴールしてしまえば失うものはない。
すすきのでちょっと遊んだ後、石狩方面に自転車を走らせる。
札幌市街は路面電車もあるため、自転車で走る際は神経を張る必要がある。
大阪ではお馴染みのジャンカラ。東京ではほとんど見ないが飛び越えて北海道に進出していたとは。
さて、石狩市に着いたのちこの橋は渡らずにさらに北上する。すると石狩でも孤立した土地に行くことができる。
そして、そこにあるライダーハウスKAZEは無料で利用できる分には充分な施設のライダーハウスである。今日はこちらに泊まる。
トイレ水道なしで、使う際は徒歩で5分ほど離れた場所にあるところを使う必要がある。
宿泊代が浮いたためバチが当たりそうなほど贅沢な飯をかきこむ。
近くにあるはまなすの公園
時間的にも余裕があるので辺りを探索してみる。
これは中々北海道でも隠れノスタルジースポットではないだろうか。灯台と共にすすきのと波と何処までも続いていけそうな遊歩道。カバンを置いてカメラだけ持ってきていたのでダンボーを忘れてしまった。
が、いつまでもいれそうなそんな情景を私に焼き付けてくれた。
是非立ち寄ってみてほしい。
本日はここまで。
8/24 ライダーハウスKAZE→みさき台公園
▲本日の旅路
231号線、すなわちオロロンロードに突入。
全長340kmを本来は3日かてけ堪能する予定だったが、今回はこれを2日で走り抜く。
そのためには初日以来となる200kmを体力のある今走り抜く。
天気はご覧のように快晴。明日は曇天となる。
まぁ走っててすぐに気づくことは長いトンネルが多い。
オロロンロードからトンネルロードに改名した方が良いのではと思うほどに。再三説明してきたが、自転車に乗っていて一番ストレスを感じるのがトンネル内である。即ちフラストレーションの溜まる道を辛抱強く行くこととなる。
また、セイコーマートも10km20km離れていることも普通なので、小まめに食料や飲料を買い込んでおくこと。
道中サイコンが2度目のカンスト。既に2000kmを走ってきたことを意味する。
暴力的な地形の岩。こういうのを見ると興奮してしまうタチである。
しばらくは何もない道を走るが急に開けたちょっとした町がある。それが留萠である。このあたりから稚内への案内も出て来る。
お店でホエー豚の豚丼を頂く。料理ももちろん美味しいのだが、私のことを息子のように可愛がり激励してくれた上、梅のおにぎりを作って渡してくれた。
後に私がこのおにぎりに救われるとはこの時予想できなかった。
この永続的に道が続くところが見える感じ、そして右手の風力発電。少しはオロロンロードらしい道になってきただろうか?
アップダウンが心電図のように激しくなってくるが、追い風が幸いしてか快調に飛ばす。ただ、交通量は相変わらず多い。
そして本日の終着点みさき台公園である。
ここがなんとも絶妙な立地であり、明日は150km弱で宗谷に行くことができる。尚且つ、温泉と道の駅野営地が隣接しているのはこの先ない。
野営地利用無料という神の与えし施設。
河豚の天丼を平らげ、恐らくこの旅最後になるであろうテントを張った。
そうか、もう明日には終わるのか。
朝起きてテントを畳んで自転車を漕いで美味しいものを食べて風呂に入ってテントを張って寝るだけの密度の濃い1日が。
あっという間だったなぁ、1日の200km以上走った愛知が昨日のことのように思い出せる。
その日は10時まで眠れなかった。
8月25日 みさき台公園→宗谷岬
▲本日の旅路
テントの口を開き、前日にセイコーマートで買っておいたコーヒーでカレーパンを流し込む。習慣付いたテンプレのような動作も今日が最後である。
どんよりとした曇り空だが、本日中に台風が稚内付近にくることはないという予報だ。いわば、台風とのデッドヒートが既に幕を開けている。
ヤツより先に宗谷岬に辿り着く。それができた後なら私はどうなったっていい。
行こう、25日間に終止符を打つ。
寝起きの私にアップダウンが先制攻撃を仕掛ける。この先もこんなのばかりか?
が、私はこの時先のことなんてなに一つ理解していなかった。
4連単のアップダウンを越えると平地に。昨日の後半同様何もない道が続く。
道路自体は走りやすいが、風が味方してくれない印象を受けた。
時間が経つにつれ味方してくれることを祈りつつ道の駅で休憩を挟む。
道中は酪農牛を見ることもある。
高速道路のように大きく広大な平地を走っていると少し眠たくなって来る。ドライバーも同じだろう。
時折「初心を忘れるな!」「ベルト閉めろ!」といった看板を目にする。初心に戻れとはよく言うが初心とは何なんだろうか。
青看板どおり232のオロロンロードを進んでいると手塩という場所に出る。実はここがターニングポイントである。
オロロンロードを進むなら106を選択する。
そこには相当な覚悟が必要である。地図を見てわかる通り106のここからのオロロンロードは真骨頂と言える。
つまり本当に何もない。
私はこの何もないを求めて遥々大阪から来たのだ。
セイコーマートで食料を買い106から向かう。106でより海岸に寄ったせいか風が一段と強くなった。快調に飛ばしたい道なのだが私の労力ほどパワーが伝わっていない。
なんだよこの風…誰でもいいから止めてくれ。
無情にも風力発電はいつもよりもグルグルと回っていた。
何が死ぬまでに一度は走りやすい道だ。名ばかりだ。糞がと吐き捨てながらもがき苦しむ。が、速度は出ない。25.24.23と減速して行く。
バイクと自動車がスィーと抜かして行く。
必死で踠いても結果が出なくて、できる奴にドンドン抜かされて行く、まるで現実世界の俺みたいだ、と皮肉めいた感想を抱いた瞬間
プツッと気持ちが切れた。箱根峠でさえ切れなかった気力が。
ゆっくり自転車から降りアイウェアを外す。静止しているにもかかわらず、ウェアがたなびくほどの風圧が打ち付けていた。
こんな環境で走れるわけがない、アホらしい。自転車を押し歩きながら周りを見渡す。
何故だろう、背負っていたものを全て下ろしたかのように気が楽になった。
自分自身急ぎすぎていた。
今日中に、台風が来るまでにと自分自身に鞭を打っていた。
それを今辞めた。すると周りの景色が変わって見えてきた。
「初心を忘れるな!!」
私にとっての初心とはなんだろう。好きな速度で走って好きな時に休憩して好きなところに行って…それが1人旅だ。
自分が一番気持ちいい速度で走ればいいんだ。どうして忘れていたのだろうか。
再び自転車に跨る。サングラスは外したまま周りの景色に目を配りながらゆっくりと走る。
思えば非日常的な景色だ。
発見は沢山ある。
鼻歌でも歌いながら私らしく行こう。
切れていた気力を結び直す。
スピードメータを見ると19kmhだった。
これでいいんだ。1人旅とは楽しくあるべきなのだ。
徐々に風にも慣れて来て、意識を漕ぐことより景観を楽しむ方に傾けた私は、気力、体力共にどん底から回復しつつあった。
ただ怖いのが高波である。かなり海に近い場所を通っているので「今地震が来たら終わりだなぁ」という絶望の被害妄想をしながら走っていた。現にこの道から逸れる道がほとんど無い。いわば前or後の状態だ。
稚内の40km圏内くらいにつけたあたりから景観はかなり現実離れしたものとなる。まるでサバンナでも見ているようだ。相変わらず動物は出てこないが、THE 自然を望みながらアップダウンを超えていく。
この辺りはかなり写真には適していたが、車通りが予想以上に多いことと風が相変わらず強い、そして雨がポツリポツリと来ていたこと等からiPhoneでパシャる程度に留めておいた。
晴れていれば時間をかけて走ってもいい場所だと思う。
そして徐々に気温が下がっていくのが身に染みて感じていた。風も俄然勢力を増し、20km維持がやっとである。偶然にも恐らく106唯一となる休憩所があったので避難。
セイコーマートのビニール袋二つを取り出し足に縛る。こうすることで足が蒸れ、体温を保つことができる。雨天ライドの豆知識である。
そしてホエー豚丼を食べた定食屋でもらったおにぎりを思い出したので食べる。
昨日のおにぎりの常温保存だが、梅干し入りということなので腐敗してはいないだろう。そして酸っぱいものは疲れた時に美味しく感じる。梅おにぎりと人の暖かさが体に染みてくるひと時であった。
その他電化製品等を袋で縛り洗浄とも言えるような道路に出る。
なのでしばらく写真はない。雨は強さを増していたがずぶ濡れになるほどではないのが幸いだ。だが風は相変わらずである。せめてどちらかにしてくれ、ダブルなのはジェラートだけでいいと思いながらも真正面からタイマンで立ち向かう。
おっかない天候の稚内だがそれでもじわじわと距離を詰め106 254の分かれ道までに来た。ここは一刻も早く稚内市街に行きたかったので106から控えめの山を登る。
この風の中ノジャップ岬にまで行くガッツはない。
山を越えると市街へ、ついにここまできたか…小さな達成感が生まれてしまう。もう今日は稚内で終わりでいいじゃん。
この考えはよくない…が、心身ともに疲労困憊であることも事実である。頭を悩ませながらも久しぶりのセイコーマートでホットコーヒーを買い前のベンチで休んでいると、
「お兄さんどちらから?」とこの度何度も聞いてくれた質問をくれたのは、私よりも5ほど上の方だろうか?どうやらこの辺りの人らしい。「大阪から自走で宗谷岬まで行きたい。ただ、台風が夜にくるのでテントが難しい、どこにとまるかを決めていない。」という節を伝える。その方曰く、この辺りのホテルはかなり高く、24時間滞在できるようなカラオケやネカフェは無いという。そして…
「よかったらうち泊まる?自転車くらいならのせられるし、何かの縁だし」
神が降臨なさった。
とりあえず連絡先を交換して別れる。ただ飲み会があるので迎えにこれるのは12時、そして行ける確率も五分五分だそうだ。
正直その気持ちだけで有り難すぎるのだが、寝床が確保できるとなると更にありがたい。そして宗谷岬まで迎えにきていただけるなら渡りに船である。
6km程走り稚内駅に到着。
一応フォトスポットである。最北の線路と写真を撮り宗谷岬へ臨む。
正直迷っていたが、お兄さんが迎えにきてくれるなら行きの30kmで全てを出し切って帰りの30kmは考えなくて良い。
ただ、オロロンロードとは比べ物になら無いほどの逆風が宗谷岬から稚内にかけて吹いていた。宗谷はどれだけ私にきて欲しく無いのだろうか。
意気込んだは良いがこの風圧は旅中最強である。あと30kmが途方もなく遠い。
自分を鼓舞しながら進む。
ヴゥゥン!と追い越して行ったバイクライダーがグッドラック!と私にサインを送る。旅中すれ違い様や追い越す際に手を振ったりグッドラックしてくれるバイクライダーの方には何度も遭遇した。その度に私は敬礼で返していた。
この荷物この自転車でここにいる人間がどういう意図なのかを理解しているのだろう。もう少しだ頑張れよ!という意味を込めてのグッドラックだろう。爽やかに敬礼で返し15kmh程度の速度でゴリゴリと距離を詰める。
が、近づけば近づくほど、宗谷岬は拒絶するように風圧を増した。海の水面を見ると私の進行方向とは逆に波打っていた。ここまで来ると私のアドレナリンも爆上がりし、「もっと来いや!!」とよくわからない反骨心のようなものが芽生えていた。
ここにきて初めて野生の生物を見た。中々に立派な鹿だ。
普段奈良公園に行った際嫌という程見てはいるのだが、こう行ったところだとまた違った印象を受ける。こんなのが飛び出してきては車はまだしも、バイクはたまったものでは無いだろう。人と接触するのと同等の衝撃を受けるはずだ。
さて、宗谷岬までは10kmを切っている。ここまで来るとウイニングランのようではある。私は関節をすり減らしてきた25日間を思い出していた。
密度の濃い1日を必死でやってきた。すると25日はあっという間だった。
そして
右拳を高く突き上げ敷地内に入る。
昨日の時点ではもっと楽にゴールできると思っていた。しかし今の自分はハンドルに肘をついてはぁはぁと荒い息を吐きながら「日本最北端」という文字を見ていた。
そして多分ここが一番風が強い。普通に立っているだけで倒れそうだ。
大阪から最北端2294km
走り切った。
ふと、やりたかったことを思い出した。
ケージからボトルを取り出し蓋の部分を開ける。そして頭のてっぺんから6割程度残っていたおーいお茶をぶっかけた。
やはり寒い時にやることではなかったか。想定では宗谷岬ももっと暑いと思っていたのだ。
もう一つ予想外だったのが観光客の多さだ。この台風接近中では頭のイカれたライダーが4.5人いるだけかと思っていたが、旅客用バスが何台が止まっていたせいかお年寄りの方で溢れかえっていた。
そうだ、写真だ。十和田キャンプでおっさんに教えてもらった通り、記念碑の前には列ができており、自転車を持った状態で最後尾に並ぶ。
だいたい10人ほど並んでいたが皆さんテンポよく撮ってはけていくのであまり待つことなく回ってきた。いざ、次の次が私の番だと思った次の瞬間
「ほら!!写真!写真!!」「ここが最北端!?」「写真撮って!写真!」
何処からおいでなすったのか20人ほどのおじさんおばさんがあっという間に記念碑を占拠した。パッと責任者であろうガイドのおばさんを見るとただただ傍観していた。
ジーザス。
嵐のようにはしゃいで帰っていった。
前の人が撮り終わって私の番になった時。
「お兄さんは何処からきたの?」後ろに並んでいる方が効いてくれたので「大阪から自走です」と答えると「大阪から自走ですってーー!」
何故か拡散する私の情報。
写真を撮るとき少し高いところに登って撮影するのだが、並んでいる人がよく見える。ハイチーズでミラーレスのシャッターを切ってもらった時に、「お疲れ様――!!」とその場にいた20人くらいの観光客の方から一斉に拍手が私に送られた。
私は表彰台にでも登ったのだろうか?私にとってはここまできた労力にしては充分すぎる報酬である。
と、同時に私の中の何かが一気に失われるのが分かった。あぁそうか満足してしまったのだ。東京、仙台、青森、札幌と度々節目があったが、私はそこを通過地点と見てあくまで宗谷岬を目標としてきた。
それを成したからもう何もする気が起こって来ないのだろう。人間はこんなにもわかりやすくモチベーションに左右されるのか。ここにきて新たな発見だった。
さて、しばらく宗谷岬の休憩所で休憩していたのだが、その休憩所の主曰く、
「その人が迎えに来るにしても来ないにしても稚内には戻っておいた方がいい、6時以降の宗谷岬は常軌を逸する寒さだ」ということだった。
あの地獄のような30kmを思い出す。既にやる気はあまりないが、稚内に戻るメリットを考えると戻っておきたい。
リスクとメリットを天秤にかけ、稚内までまた戻ることに。
っと、その前に。素で忘れていた宗谷岬証明書である。お土産やさんで100円で購入可能。日付も入れてもらえる。
ジャージを上下着込んで完全防寒で再出発。
軽い。走りの軽やかさが雲泥の差である。スピードメーターを見ると35kmh。
オールスターで味方になったG菅野みたいだなと思いながら流れに身を任せて進む。
行きはこの風を敵に闘っていたのだから過去の自分には敬服である。
改めて自転車が風に左右されるスポーツであるかを思い知ることができた。
1時間ほどであっという間に稚内に到着。温泉もあり道の駅もある。
ここでLINEが。
お兄さんから「やっぱり無理になった」というメッセージ。
本当に戻ってきてよかった。ただ、お兄さんのおかげで今日宗谷岬に行く踏ん切りがついたのだ。やはり感謝しかない。
稚内にはネカフェもカラオケもなく、道の駅も12時で締め出される。
夜には台風が到着する予報だ。テントを張るのもリスクが高い。
さて、始発までどうするか?幸いなことに24時間営業のすき家があり、なんとその日は5時間ほど寝ずにすき家に滞在した。
ちなみにこれもすき家で書いている。
三種のチーズ牛丼のみで5時間以上粘った。チーズだけに粘り強く。
※翌日輪行で小樽まで行き、フェリーで帰りました。
最南端編▼