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大阪から関東に左遷されたあほんだらの自転車旅行記

美しい台湾(環島)一周サイクリング 8日目 墾丁~台東

 
風はその日のサイクリングを左右する。ローディにとって風向きとは最大の助太刀にもなり得るし、最恐のボスともなり得る。
知り合いのおっさんに「俺はサイクリングのとき西から東しか行かん」という奴がいる。
理由は東から西は逆風になる、逆風で走るくらいなら走らんほうがマシや。というものである。
 
 
3/8 墾丁
 

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さて、ほぼ海沿いに台東を目指す。
距離としては120km程度だろうか。アドバンスな条件なら怖くない数字である。
 
風は相変わらず吹き荒れる、むしろ勢力を増しているようにも思えた。
雲はどんよりと暗さをも孕んでおり、いつ降り出してもおかしくないような雰囲気であった。
朝七時に暗いドミトリーから片足出した瞬間に不穏ななにかを私は感じとった。
 

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走り始めて思ったのが全く速度が出ない
疲労、風諸々あるが少しずつ勾配が増しているのだろう。序盤からハードである。
写真はないが開始10kmほどで満州という場所に出る。
それ以降のコンビニはかなり先になるので補給はここで入念に行っておくべきである。(遺言)
 
 
朝食と補給を済ませて私は地獄へと巣立っていった。
まずこの26号は内陸を抉っているのは地図を見れば明白だが、そういった道は例外なくかなり登らされると思ったほうが良い。
高湿度による出汗が止まることを知らない。
 

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長かった26の山路を下りると海岸線沿いの平地へ。
喜びは強風と共に吹き飛ばされることとなる。
 

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面白いように進まない。
ペダルは鉛のように重く、息は絶え絶えになりながらジリジリと芋虫のように這う。
休憩がてら写真を撮ろうにも自転車が風により安定して立たないので問題外であった。
晴れて風が安定していたらたら気持ちいいんだろうな。
この時はそんな潤沢な考えもできた。
 

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しばらくのっそりと海岸線を走っているとなぜか
緑色の石畳の建造物が多く見受けられた。
年期もかなり入っており、緑に囲まれた緑の建造物はなかなか趣があった。
なんだこれ写真に撮っておこう(パシャ)
 
その直後にすぐそばにあった赤看板に目が行った。
 

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Jesus!!!!!

 

自分が消される前に写真を消すことにした。
 
しばらく左は台湾の軍用基地を右は天気の悪い海傍目に走ることになる。
というか、サイクリングロードにこんな国家的機密事項が組み込まれているのもどうかと思うが。
 

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軍事ゾーンを抜けると再びアップが始まる。
最初は上から海見れるじゃんとお気楽に登っていたが、ポツリポツリと冷たい雫が肌に触れる感触にゾワリと悪寒が押し寄せた。
ここで降られるのはマズすぎる。
 

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ポツポツポツとビートが細かく刻まれ始めたと同時に偶然レストランに遭遇。
雨宿りついでに腹も満たす。もう11時半になろうとしているが進捗は非常に芳しく無い。何故ならヒルクライムと逆風平地しか来ていないからである。
距離が稼げているわけもなく疲労感だけは一丁前であった。
 

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美味くも不味くもなくただただ肝臓がしんどい飯を平らげると、雨はポツポツからパラパラへと弱体化していた。
 
走ってるうちに止むか?と安易な考えで飛び出す。
人間は時に「こうあってほしい」という無意識の願望により、冷静な判断力を失い楽観的思考の愚かな選択をする。
さらに標高を増していくとパラパラ雨と温度で濃霧が生まれ、視界をシャットダウンしていた。
 

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9号線への案内。
9号に乗れば登ってきた分下りがあるはずだ。心に光が差す。
 
が、強くなる雨脚がそれをも洗い流して行った。
もう完全にびしょ濡れなので濡れることに関しては諦めた。そして9号に入っても登りは続いた。
ダダぶりの中小さなギアを回しチビチビと関節をすり減らす。もはや修行である。
風でファサファサと両翼の並木が揺られる度、枝の葉溜まっていた泥水の塊がバケツをひっくり返すように私に降りかかった。私が何をしたと言うのだ。憤りさえも覚える仕打ちに身体が熱くなる。しかしそれも打ち付ける冷たい雨が急激に身体を冷やすことで解決して行った。
 
雨天ライド体の体温を下げる原因としては足からが基礎知識だ。足の体温を奪われると体全体が冷えパフォーマンスも落ちる。
故にビニール袋で両足縛ったり等色々雨天ライドでは工夫があるらしい。
 
4kmほどさらに登りが続くとようやく下りへ。豪雨の中一気に駆け下りる。
泥水が跳ね顔にかかることにも抵抗は無くなってしまった。まさに泥水をすすりながら走る。
 

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降りきると久し振りにコンビニ等のある市街地へと辿り着いた。ずぶ濡れのままイートインで休憩していると雨が一時的に挙がった。
 

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再び海岸線を走ることになる。
 
多少の風はあれど午前ほどではない。
もしかしたらいけるかもしれない。僅かな希望を垣間見た。
 
のも束の間、前方から槍のように打ち付ける雨が再び勢いを増し私に襲いかかった。
 

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たまらず最寄りの駅内に避難する。
外の様子を見た限りだと降り止む気配も当時は無かった。
電車を使おう。晴れやかな表情で決断する。
台東まではのこり40kmほどだが、この天候の中を行くガッツはない。
 
台湾の電車賃が安いと言う噂はどうやら本当で、40kmの道のりの運賃が360円ほどであった。さて、次の電車は何分だろう。そう思いたって時刻表を見た私は愕然とした。
 
最も早い便が4時半だったのである
現在14時半、つまりこのこじんまりしたホームで2時間も待たなければならない。
溜まっていた記事でも書いて時間を潰すかと思っていた矢先、外の音がピタリと止んだ。
 

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どうせまた降るんだろう、そう思いながらも私は希望を捨てきれずにいた。
それに2時間待つのであればどうせなら進んでおこう、また降ればその近くの駅で電車で行くことにしよう。
そう思うと体は軽く、再び海岸線9号を走り始めた。
 

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轍を滑走するたびに跳ねる水溜まりが脚にぶっかかる。海岸線とは言いつつもかなり高い位置まで登る。
日本では自動車道のような道をこんな二輪で走ってもいいのか?
圧巻の景色と若干の高所恐怖症の二律背反で揺れながらペダルをグイグイ回していく。すぐ横の柵が不甲斐ない上、すぐ左を結構な確率で大型車が通るため恐怖が若干優っていた。
 
 

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この道は天竺へとつづいているのだろうか?
空の海の狭間に吸い込まれていくような神々しい道路にそんな詩的な感想さえ生まれた。
空は相変わらず雲に覆われていたが降り出す気配は無かった。
 

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30kmほど走ると温泉地で有名な知本かつ台東市街地内へ到達。
 

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その中にあるこちらが今回の宿泊先。
おそらく今日が台湾旅行中最もハードで気力をすり減らした日だったろう。
シャワーを浴びてラフな格好に着替え、ベッドにバタンQしたい気持ちをグッと堪える。
まずは自転車を拭いてやらねば。いつもありがとうな、今日は疲れたなありがとう。
そう声をかけながらタオルでへばりついた土砂を拭いてやる。
 
ドミトリーの主はその様子を気味悪そうに遠目から見ていた。
 

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本日はここまで
 
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