ひとりぼっちの自転車日本縦断 Part8【志高湖キャンプ場~佐多岬】
※大阪から日本最南端の佐多岬に自転車で赴いた記録です
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▲本日の旅路
起床
朝7時、斜めった坂で寝ていたため体がずり落ちてテントにえぐれた状態で寝ていた。
テントを開けて外へ。
これは壮観だ。ここまでキャンプ場らしいキャンプ場も珍しい、車のCMみたいではないか。
後ろにそびえたつ岳が由布岳であることはこの時まだ知らない。
まあそんな景色も霞むほど早朝の高標高キャンプ地は肌を切り裂くように寒い、蛇口を捻って出る水は頭がおかしくなるくらい冷たい。
そんな零度の世界をもすいーと気持ちよく泳ぐ白鳥の様子を眺めつつ周辺を歩く。
気温に体を慣らしたところで出発。
11号に軌道を戻しまた坂を登る。
えげつないくらい自転車には余裕のない車幅だが景色はかなり良い。秋と書いたような情景に思わず感嘆の声を漏らす。
こちら由布岳、秋のハイキングには良いだろう。
昨晩思っていた以上に上っていたようだ。由布市街が一望できる。
雲が街並みに影を作る様子を見るのは楽しい。
CGのような実写をはた目にスピードを上げ下る。
11号で坂をぶち抜いたのち由布市街へ、風情ある小さな街をあっという間に抜け210へ。
幾何かのアップダウンを経たのち号で40号を使い南下。
ヤマメ料理で腹を満たしつつ九酔渓をグイグイと登っていく。勾配はまあまあありキツい。道中車に乗ったお母様に「がんばれー」と声をかけていただいた。
しんどさとは裏腹に景色は良く暖色系を混ぜ合わせたバレットをも連想させる。
暫く登ると目的の一つであった九重夢大吊橋に到着。
九酔渓で結構高くまで登って来たようだ。
シーズン真っただ中故に客足は好調で橋の上も牛歩状態である。鮮やかな紅葉を貫くようにそびえる3つの滝が強い存在感を我々に魅せてくれる。
だがそんなこともかすれるほど、渓谷の形状のせいか風が吹き曝し体感温度は常軌を逸していた。
観光客の会話も「景色の話」く「寒い」であった。早く退散しようにも牛歩という現状。
気を取り直して再開
ぼちぼち上るとツーリストから莫大な支持を得る「ヤマナミハイウェイ」の案内が。
案内に従っていくとぶっとい道路に合流。
おお・・これは。ポスターに使われてもおかしくないくらいじゃないか。
どこまでも続いていきそうなアスファルトの線が日の丸構図で伸びていた。
平地に見えるが微妙に坂になっておりスピードは出ない。意外だったのが自転車はほぼいなかったことだ。
メディアで取り上げられるヤマナミハイウェイのベーシックな姿は夏仕様だ、しかし今私の目の前に広がる情景が伝える情報は秋である。すなわちこの時期にこの場所に来た者だけがこの真の姿を目にすることが出来るというワケだ。
大地の雄大さに心を奪われつつも登っていく。
ヤマナミハイウェイという名前から激勾配を覚悟していたが、由布岳やつりばし辺りから既にかなり高標高につけていたため、特に急な勾配は存在せず、かといっても楽ではないちょうどよいウェイトをかけながらヒルクライムすることが出来た。
道中工事が、対向車線が渡り終わるまで120秒ほどの足休めを強いられる。
今回は完走目的でもないのでおとなしく従う。
特にぜえぜえ言わすこともなくゴール。
ただこの時点でまあまあな距離を走っているためしんどくは無いと言えばうそになるが。
標高1330m
登った先には車50台ほどの駐車場と、道の駅ならぬ山の駅のような施設が併設されていた。
ソフトクリームをいただく、高標高故に寒い。食べた後少し後悔。
奥には登山者用山岳ルートの入り口が、まだ上るのかよと思ったが登山客はここまでバスで来て頂の美味しい部分をほとんど労せずしていただくのだろう。
少し休憩した後、風を切ってハイウェイを下っていく。
道中ある最も見晴らしの良い場所。
世紀末系のRPGのエリアマップのような情景に思わず声が漏れる。
ちなみにこの場所から見える山頂(1330m)がこちら。
さっきまでこんなところにいたのか俺は。
ペダルを回さずとも回ってくれるリムが心地よく、速度をどんどんと上げていく。
暫くすると平地へ、ただそこまで下った感覚もないのでまだ標高はあるのだろう。
前方には高々と聳え立つ阿蘇山が、アレを超えるのは明日になるだろう。
11から45号に、この45は牧草地帯に囲まれ通称ミルクロードとしてツーリストに親しまれている。
夏真っ盛りだと青々と茂る牧草を両翼に迎えつつ走るのだろうが、やはりこちらも明るい茶色に焦がし私を出迎えてくれた。
登り一辺倒ではないが、大規模アップダウンが続くため安定して走りにくくすぐにばてる。
ミルクロードという可愛らしい名とは裏腹にサイクリストにはなかなか辛辣な道であると言えよう。
阿蘇に立ち寄った際必ず訪れてほしい場がある。それが大観峰である。
ミルクロードに沿っていると道中案内が出る。少し上った先にある景色は、ミルクロードの牧草地帯からさっきまで下ってきたやまなみまや阿蘇市街までをも見渡せる最強の景観となっている。
ここに関しては言葉が出ない。
いつまでもここにいたいとまで思わせる場所であった。
バイカーの聖地ということもあり大量のバイクが、そして意外や若い観光客も多かった。
そんな景色に心奪われ汗冷えが気になりだした時、そういえば宿どうしようという危機感が芽生え始めた。
とりあえずライダーハウスを検索し、阿蘇市街にある阿蘇ライダーハウスへと訪れることにした。
ご覧のあり様だよ。
やはりぶっつけ本番はきつかったか。
しかしこの高地でテントを張る恐ろしさは岩手山で学んでいる。故になんとか壁に囲まれた施設で寝たいところ。
手あたり次第当たること10分、一泊3000円で泊まれる外国人バックパッカー向けの宿泊施設(ゲストハウス)に空きがあり泊まることに。立地は阿蘇駅から徒歩3分という好立地。
温泉はゲストハウスから5分の所にあり、休憩室で日本シリーズを観戦。
幾多の山越えで流石に疲れのようなものも蓄積しつつあるので久々のふかふかベッドで早めの就寝。
▲本日の旅路
起床、現在の立地としては阿蘇山北部にいる。そこから111こと阿蘇パノラマラインで阿蘇をまたぎ南下し、宮崎県に南下する。
寝起き早々だが緩やかに傾斜を登っていく。
ある程度まで登ると右手側に阿蘇市街を望むことが出来る。
左手には阿蘇山と牧草が、早朝にもかかわらず牛さんが活発に動き回っている。
最初は緩やかだったが徐々に勾配を増していく阿蘇パノラマライン。
とはいってもまあ足を着く程でもない。
恐らく最高標高?らしき場所に到着。
濃霧が萬栄していた。
気温は汗冷えも相まってかなり寒い、早めに下ることにする。
下ると草千里ケ浜という場所に降り立つ。ネットの写真はかなり綺麗だったが現実は霧で見えにくかった。
ある程度走ると阿蘇山火口のかなり近くに。
普段はロープウェイでの移動が主だが、熊本地震の影響で現在は運行していないそうだ。
今はバスや車等で阿蘇カルデラの火口付近まで登れるらしい
阿蘇山公園道路を登っていく、明らかに自転車は登れないっぽい道路だったが、料金所のおっさん曰く自転車は無料だそうだ。
ただ、ガスが充満しており鼻孔を突くにおいがする。
そしてこの道路勾配がえげつない。
四国カルストの時の最大勾配をも優に超えてるであろう。体感的には17くらい?そりゃそうだ、本来自転車で登るべきような道ではない。
ぜえぜえ云いながらギリ自転車OKなところまでこぎつけた。
そこからは歩きで阿蘇中岳火口に到達。
私が小学生の時家族旅行で連れられて以来だ。当時は雨も降っていたし記憶も定かではない。が、まさか自転車でこんなところまで来ることになろうとは当初の私に言っても信じないだろう。
火口から溶岩?を覗ける。
ガスの匂いはよりきつく、鼻がずっとムズムズする。
が、景色は最高だ。
特に走ってきた道を見ると「ザ大地」と言わんばかりに焦げ茶色の山々、蛇行して伸びてくるアスファルトがまざまざと視界に写る。
書いている今でももう一回走りたくなる。
熊本地震の爪痕も所々に目につく。
あまり長居すると体に毒らしいので堪能したところで再び111に合流し下る。
さらば阿蘇、本当に最高だったよこの山々は。
自転車でこのボス級を連戦できたことを誇りに思う。
しかしまあこう降りてる景色を見ていても宮崎までにはもう1戦くらいありそうだ。
暫く下ると白川水源で知られる場所へ、さっきほどではないがザ田舎といった感じだ。
宮崎県境の高千穂を目指す。
暫く325の脇道を走っていると高森峠九十九曲がりという場所へ。
普段ならちょうどいいかもしれないが正直連戦に次ぐ連戦でかなりHPを消費している。今回の旅も完全off日は無く、船移動以外はほぼサドルにまたがっている。
325に合流し何回か控えめな坂を超えると高千穂並びに宮崎県へ。
ほぼ魔境である九州内陸部の中ではそれなりに栄えてはおり、そこからさらに下ると観光名所でもある高千穂峡へ。
かなり神秘的な景色ではあるがここ数日絶景に目が肥えたせいかそこまでの感動は無かった。
崖下のカヌーから見た景色は少し見てみたかった気もする。
滝の部分がフューチャーされがちだが、そこから少し歩けばまた違った清涼感のある場所に出る。
でまあここに来るまでに高千穂市街から結構下ったわけで、戻るにはまた登って帰らねばならない。
218号線で海岸側まで40kmほど走る。ほぼ下りか平地だったのが救いか。
海沿いに面した延岡市に到着。
ここからさらに南下すればキャンプ場のある日向市に着くがそんな気力もないのでその辺にあった24時間制カラオケで風呂にも入らず就寝。
10月28日 宮崎県延岡~宮崎県日南市
▲本日の旅路
起床
風呂に入らなかったせいか体もねばねばしており気持ち悪い。
本日は宮崎県日南を目指す。
ルートはいたってシンプルで海岸沿いをまっすぐ南下するのみである。
少し寄り道でイルカ岬へ。
快晴である。
国道10号を天気も良く青く染まった空と海を望みながら走る。
大きなヤマを越えることは無いので楽か?と思っていたがそれは大きな間違いであった。
頻繁なアップダウンとえげつない車の交通量、そして逆風ですっかり疲れてしまった。
地味にこういうのがHPを削り取っていく。
結構南下してようやく宮崎市内へ。
流石に栄えている。
宮崎と言えばチキン南蛮ということで適当に入った店でチキン南蛮をいただく。
宮崎ではソウルフード故にもうチキン南蛮をおしゃれに食べる領域まで来ている。
腹を満たしさらに南下、ここからは220号へ。
日南海岸ロードパークと呼ばれる道を走っていく。
道中サンメッセ日南という場所で本物のモアイを拝むことが出来たらしいがモアイ見るだけでお金かかるらしいのでスルー。
鵜戸神宮はスピリチュアルに疎い私でも知っている場所だったので2kmほど寄り道して寄ることに。
結構疲れていたので階段の上り下りだけで一苦労であった。
しかしまあ海沿いに面した神社というのも珍しく洞窟の中に建造物が侵入している神津も面白い。
休憩もかねた観光し終わったのち再出発。旅も終盤かつ風呂に入らなかったため疲労がやばい。
なんとか日南市街に到着。カープのキャンプ地ということもあり街並みもカープ色に彩られていた。まさにカープファンの第二の聖地と言えよう。
油津駅、ここまでくると凄いな。
線路沿いに北上すると日南で一番近い温泉がある。
2日ぶりの温泉で心身を清め、休憩室で観戦。やはりここの人もカープを応援しているようだ。
試合が終わったのが10時頃(無論敗北)
外に出ると辺りは街灯でかろうじて見えるくらいには暗く、なにより寒い。
寝床も正直決まってはいなかったが、温泉から最も近い民間公園がぼちぼち良さげだったのでテントを張り就寝。
10月28日 宮崎県日南市~鹿児島県佐多岬
起床、今日の目標は南下し、明後日最南端に着く程度に着けておくこと。(大隅半島)
再び220に戻り南下する。
凄くデカい軍艦?のようなもの
今回は少し中をえぐりながら行く。後で思うと海岸線沿いの都井岬に寄っても良かったななんて考えたり。
そんな道を走っているとほどなくして鹿児島県内に
早速野生のブロイラーがお迎えしてくれた。(マジで道路に飛び出してきた)
一旦220で半島の西側まで行き切ってから再南下する。
鹿屋市まで行った後269に乗り換え、この時点でまだ2時半くらい。
これもしかすると今日中に最南端行けるんじゃね?
そう思い少しペースを上げる
海の向こうには向こうの薩摩半島が望める。
途中までは非常に走りやすく、自分の中では30km以上の巡行が出来たと自負している。
しかし残り15km程度になったくらいからか?
国道269が終わり、県道68になったところで佐多岬が牙を剥く。
最南端という秘境地舐めるなよと言わんばかりのえげつないアップダウンヒルを見せ私の脚を削り取ってくる。
566に入り残り8kmとなると更なる追い込みがかかる。後一桁が果てしなく遠い。
暗くなる前に決めたい・・・そう思いながら必死でペダルを回す
そして16時50分
みえた。
最南端の記念碑だ。
大阪から寄り道しまくって7日間
距離は実はわからない。(途中でサイコンを落とした)
多分1000~1200kmくらい。
もう少し行けば展望台が。
ここが自転車で行ける本当のゴールだ。
宗谷とは違い私含めて4人程度しかいなかった。
写真を撮ったりしながら30分程度休憩していたが、はたとここが最南端ではないことにようやく気付く。本当の最南端はここから2km弱歩いた場所にある。
トンネルを抜け明らかに突貫な階段を下ると私が求めていたものはそこにあった。
暗雲を切り裂いた斬撃のような夕焼け。
そうここが正に九州最南端だ。
じわあと胸中に感動が。
足はもうがくがくだ。この1週間で10年分の景色を見た気がする。
暫くその場で座りつくしていたが、悲しいかな現実はやってくる。
寝床問題、あたりはかなり暗くなってきており、街灯もない。
こんな秘境に取り残されてしまったら危ないし怖い。
早歩きで戻る。辺りは私1人しかいない。
行きに通ってきたトンネル。これ怖いなあ。
なんとか展望台まで戻ってきたが・・寝床問題は依然解決していない。
さてどうするか、ここから1番近いホテルまではここから8km。そのすぐ近くにキャンプ場があるらしい。ここまで行くしかない。
既に0近いHPを振り絞りまたアップダウン地獄へ。街灯もない寒い夜道を走る。
命からがら佐多ホテルに到着。
温泉はまさかの私の貸し切り状態。泳いだりもぐったりした。
さて風呂から上がり食堂で日本シリーズ観戦。
さて早々に試合に見切りを付けすぐ横にあるキャンプ場へ。
ただ視界がなさ過ぎてどこがキャンプ場なのか。
と思いながら恐る恐るふらふらしていると
「こんばんわー」
私以外にも人が。
ここに1人は怖かったので本当にありがたい。千葉からバイクで日本を旅しているそうで。星空を眺めながら話に花を咲かせた。
↑こんな感じ。向こうに見えるのがホテル(翌朝の写真
一応最南端は達成したが、次回はここから福岡までの記録です。