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大阪から関東に左遷されたあほんだらの自転車旅行記

美しい台湾(環島)一周サイクリング 12日目 宣蘭~九份

どんな景色があって
どんな人と出会って
どんなものを食って
どんな体験をして
どんなものと遭遇するのか
どんなことが起こるのか
やってみなきゃわからない、だからこそ面白い。
 
 
3/13 宣蘭
 
ピカピカに磨かれたシルバーのフレームに燦然と輝く太陽が反射し、より煌めきを増していた。
空が雲に覆われていない、いつ以来だろう。
たったそれだけのことに少し泣きそうであった。
当たり前がある幸せを噛み締めながら今日も私はペダルを踏む。
 

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本日は宣蘭から90km離れた九份へ。
九份と言えば台湾人気を確固たるものにしている台湾が誇る圧倒的な観光地である。
何しろジブリ映画「千と千尋の神隠し」の舞台とされている場所である。
日本人客も当然多く、ガイドブックの表紙を飾ることも多い。
そこに十分を経由して向かう。
この十分もまたインスタ映え等で日本人から絶大な支持を得る。
 

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澄み切った空の下、ルブで滑りの良くなったチェーンを掻き回す。
この辺りは台湾でも指折りの温泉街なようだ。
 

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行き方は2通りあり、2号を使い海岸沿いを攻めるルート、9号を使い峠ど真ん中をブチ抜くルート。
前述した通り、山奥の秘境十分を経由するため後者の9号山岳ブチ抜き大作戦で行くことになる。
そもそも海岸沿いは落石がひどく、所によると電車での移動を強要されるようだ。
 

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早速9号に乗り山の懐へ、勾配はそこまできつくなく常に7%程度の坂が続く、7%とはいえかなり長い距離を登ることとなる。
 

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標高はかなりの高さになり、宣蘭の街をを見下ろすことができる。
緩やかな傾斜、良い景観、ポカポカ天気も相まって大型二輪を乗り回すツーリストも多く見受けられた。
 

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丁度ボトルが空になったあたりで降りへと差しかかった。
一気に駆け下りると坪林という市街へ。水分補給と腹ごなしを行う。
 

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生地はサツマイモの天ぷらっぽい味。
サクサク感はあまりなくエビの部分が美味しい。
 

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しばらく休憩し重い腰をあげる。ここからは国道から外れ、日本で言う県道のような小さな道を行く。
予想通り先ほど登ってきた道が可愛く思えるくらいの激坂がいきなり立ちはだかる。
撤底的に脚と心肺をイジメる。
 

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今回はパンク頻度が高い。元凶の小さな針を抜いてやる。
こればかりは対策しても回避が難しいから仕方がない。
 

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短い距離だが山々が既に下に見えていた。
 

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一区切り部分。ここまでの高標高でさえ寺院が建てられている。
建てるの苦労しただろうな。
ボトルが空になることを見越して、ペットボトルの状態でもう一本バッグに忍ばせておいたのは正解だった。
 

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まだもう少し登りは続くようだ、気合いを入れ直しやや張りつつある腰を伸ばす。
重いバッグを背負いつつ登ると腰にもダメージが来る。
 
最初こそ体重移動めちゃくちゃなフォームで登らねばならないような勾配が続いたが、徐々に落ち着きを取り戻しやがては降りへと変わっていった。
 
気持ちの良い下りを満喫する。登りきったものへのご褒美のようなものだ
もっとも気持ちいい瞬間かもしれない。
 

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ほどほどにブレーキをかけつつ降りていると道路の脇でモゾモゾと蠢くものが。
 

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これは…アルマジロか?
白い身体の背中が厚そうな鱗で覆われており、面構えは目がぱっちりしており可愛い。
前に見たディスカバリー系の番組ではアメリカ大陸等にいた記憶があるのだが…なぜアルマジロがこんな所に。
 

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しかもかなり大型である。私の手と比較していただければ一目瞭然であろう。
後にわかったことだがこいつはセザンコウという生物であり、絶滅危惧種に指定されている。
世界一密売されている種であり、ハンターや密売人の手によってその数をみるみる減らしているのだという。
台湾の方の何人かに聞いたが、生で見たことは一度もないと言う。
ものすごく貴重な出会いだったのかもしれない。
 

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何枚か写真をいただき、バイバイと別れを告げる。あの小さな後ろ姿が悪いハンターに見つからないことを願う。
 

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センザンコウの興奮覚めやらぬまま十分へ。
鉄道の上を幾人もの人が歩いている。
ユニークな街だ
 

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ところどころで願い事を書いた紙気球?のようなものがあがり、その街全体がお祭りのような雰囲気を醸し出していた。
自転車を停め、人口密度の高いその場所を歩いてみる。
 

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やはり日本人が多く耳に入る言語は店員のカタコト日本語か、観光客のヤバーイ、カワイイといった戯言ばかりであった。
日本人がいない方が気が落ち着くな…。こちらへきて12日目、私はすっかり変わってしまった。
 

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一応私も願い事を飛ばす体験をしてみる。
1回600円程度。写真を撮ってくれるサービス付きだ
4つの願い事を書かされる。
 
幸せの尺度を他人に委ねない。
自分を曲げない。
健康第一。
幸福に生きる。
 
願い事というよりは意気込みではないだろうか。(セルフ突っ込み)
自分を曲げないの文字が曲がりまくっているため、信ぴょう性は皆無である。
 

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近くにデカめの滝があるらしいので寄ってみる。岩手県のを連想される。綺麗な場所ではあるが、滝までは15分ほどの徒歩を強いられる。これが地味にしんどい。
 
時間は14時40分、九份に向かうわけだがそのためには基隆という場所に行く必要がある。そして例により山を越える。
分が既に八方塞がりなほど山に囲まれているのでどのみち峠越えは必須なわけだが。
 

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ガクつく脚に鞭打って本日3回めの峠登り。ここも中々の激坂である。
そして最も怖いのが十分に大量に停まっていた観光バスが九份方面に来ることである。中にパンパンに詰まっているであろう数多の日本人に車窓越しに峠をゼェゼェ言っているところを見られるのが心底嫌であった。
幸い?なことに観光バスに一度も追い抜かされることもなく基隆市まで一気に行くことができた。
脚はパンッパンである。
 

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本日は距離に対しての獲得標高の比率がいかつい。
このまま真っ直ぐ15kmほど走れば九份だが少し寄り道7kmほど逸れた場所にある村がそこそこなの知れたニャンコ村なのだ。
猴硐貓村
猫好きの私として見過ごせなかった。
 

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立地が立地だけにまた激坂を登ることも覚悟していたが、そこまでではなくほぼ平地でたどり着くことができた。
 

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ニャンコはみなダルそうにしていた
ルールを破り触ろうとする者、無邪気に追い回すこども、頻繁に来る観光車。
観光の出汁に良されたニャンコが少しかわいそうに思え、センザンコウインパクトが強すぎたことも相まってあまりテンションもあがらなかった。
しかし、屋外の猫を撮る機会も少ないため台湾の中では比較的お気に入りの場所にはなった
 
さて、いよいよ最終地点九份へ。
行ったことのある人間ならわかるが九份はかなりの高所にある。
これが旅最後の最後の激坂だろう、バスとタクシーでパンパンな激坂の合間を上手いこと登る。
 

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たどり着いた
だがここまできたら最後まで、九份の最上を目指そう、テンションもあがり標高もあがり景色も良くなっていくその刹那
 
ガッキィィイ!!!!!!
 
轟音が轟き、周りの観光客も一斉にこちらを振り向いた。
自分でも何が起こったのかはわからない。ただペダルを踏んでも何かが引っかかったように動かない。
路肩のバス停に寄せ俯瞰で愛車を覗き込んだ瞬間、硬直した。
 

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絶句。
こんな壊れ方見たことがない。
なぜこうなった?とりあえず六角レンチでリアディレイラーを外し、ホイールを外す。
そこにはステージ4の末期ガンのような致命傷があった。
 

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これはどうしようもない。
無論自分での修理は不可能、台湾の自転車ショップでもお手上げだろう。
メーカーお問い合わせ案件だ。
 

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人間本当に悲しいときは涙も出ない、ただ呆気にとられ現実逃避するように九份の高みから見える夕日を眺めていた。
しかしいつまでも呆けているわけにはいかない。俺はできることをしよう。畳んで輪行袋に詰め宿へ。
 
それは自転車旅としての終焉を意味していた。
心なしか悔しさは出てこなかった、
1119(km台湾の9割5分は走破し、残すは台北への雑魚道。
ここまでよく走りきった、自転車もよく俺に応えてくれたというのが自己評価である。
 
ショックのデかさと、愛車がこんな状態にもかかわらず自分だけ九份を楽しんでいいのかという自己嫌悪もあった。
しかし、ここまで私を運んでくれたスーパーコルサのためにも一眼片手によるの九份へと繰り出した。
今回泊まった宿がナイトウォークという企画をしていたのでそれに便乗することにした。
 

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自然、古き良き建造物、賑やかさ、写真映え。どれをとってもいい街ではないか。
日本人が多い以外は。
 
明日からどうすっかなと考えながら瞼を閉じ神経を遮断した。
 

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本日はここまで
 
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